4コマ漫画は、僕が描ける唯一のラブソングです!

新潟県在住のイラストレーター。4コマ漫画、イラスト、シナリオ、ロゴマーク作成します!

発信器を持ったサル 前編

銀河のすみっこ、遠い昔か、ずっと先のお話。

 

博士 よし、出来たぞ!

助手 やりましたね博士!おめでとうございます!

博士 おめでとうございますって君、私が何を作っていたか知っているのかね?

助手 知りません!(テヘ)

博士 知らないで祝福するとはどういうことだ?

助手 別にいいじゃないですか!知らなくたって。祝って欲しいんでしょ?

博士 そりゃそうだが…なんか釈然としないな…

助手 いいからいいから!で、何が出来たんです?

博士 うむ。実に画期的な機械なのじゃ!

助手 凄いです!メチャクチャ画期的じゃないですか!博士最高!

博士 まだ何も言っておらんぞ!

助手 だって画期的なんでしょ?前代未聞なんでしょ?

博士 それはそうだが…なんか段々ムカついて来たな…

助手 細かいこと気にしないで!さあ早く教えてくださいよ!

博士 う、うむ。これは、この星のサルの生態を調べる機械じゃ

助手 サルの生態を調べる機械?

博士 そうじゃ。サルの生態を調べるのは非常に難しいのじゃ

助手 知ってます知ってます。あいつらはそこそこ頭がいいですからね

博士 そうじゃ。まず、ずっと見張っているとサルにストレスがかかって客観的なデータが取りにくい

助手 ですよね。さりげなく、見張ってないといけないですもんね

博士 だから、今までいろんな物が開発されてきた

助手 リストバンドとか、マイクロチップを体に埋め込むとか

博士 そう。だが、研究の為とはいえ、サルの体に埋め込むのはなぁ

助手 ちょっと気がひけますねぇ

博士 そうなのじゃ。だから、もっとサルにとって負担少ない物を…

助手 開発したわけですね!それは凄い!

博士 やっと分かってもらえたか

助手 で、どんなものなんです、それは?

博士 これじゃ!

(博士、機械を見せる)

助手 こ、これは…こんな大きくて大丈夫ですか?

博士 大丈夫じゃ。サルの手にはなんとか乗る大きさじゃ

助手 し、しかも、表面はガラス製?落としたら割れるんじゃないですか?

博士 無論、落としたら割れるじゃろう

助手 そんな!そしたら、サルの生態を調べる前に、壊れちゃいますよ!

博士 大丈夫。サルはこれを大事に扱うから

助手 サルが?これを?何故です?

博士 ふふふ。それが今回の開発の味噌よ!

助手 味噌?食べられるんですかこれは?

博士 なわけあるか!ポイントじゃってことよ!

助手 これを、サルの体にくくりつけるわけですね?

博士 そんなことはしない

助手 ええっ?じゃ、どうやって、この製品とサルをくっつけるんですか?

博士 くっつける必要はない

助手 はい??

博士 サルは、これを自分で持ち歩くのだ

助手 サルが?自主的に?この機械を?

博士 いかにも

助手 そんなバカな!どこの世界に、自分でわざわざ機械を持ち歩くサルがいるんです??

博士 それがいるんだなぁ。私の長年の研究によれば、この星のサルは、この機械を大事に扱い、肌身離さず持ち歩くはずなんじゃ

助手 そんな都合のいいことが…

博士 あるんじゃ。だから、超画期的な発明なんじゃよこれは!

助手 分かった!じゃあ、この機械からは、大したデータは取れないんでしょ?

博士 そんなことはない。この機械には発信器が付いているからな。この機械が得たデータは瞬時にサーバーに送信される

助手 どんなデータが取れるんです?

博士 まあ、やりようによっては無限大じゃな

助手 もったいぶらずに教えてくださいよ!例えばどんなデータが取れるんです?

博士 そうじゃな…性別、年齢、行動範囲、睡眠時間、使用言語、資産力、仲間との交友関係、グループ内における階級の位置、嗜好の傾向…

助手 え?そんなに?

博士 工夫すればまだまだデータは取れるぞ。サルAとサルBが同時刻に位置XXXに一定時間内に滞在したらその後AB間で子孫が生まれる可能性が高い、とかな

助手 でもでも、それをするには、調査対象のサル群全個体にその機械を持たせる必要がありますよ。そんなことは現実的に無理でしょ…

博士 いや、それが可能なのだ。この星のサルは、この機械を喜んで持つはずじゃ

助手 何故です?だって、その機械は別にサルに縛り付けるわけじゃないんでしょ?持つ持たないはサルの任意なんでしょ?そんな、サルのプライバシー情報ダダ漏れの機械、サルが喜んで持って、大切に扱うなんて、考えられない

博士 君は考え違いをしているね

助手 ええっ?どういうことです?

博士 君は、サルが得られるメリットを考えていない

助手 メリット?メリットなんかあるんですか?ただの発信器でしょ?

博士 そこが盲点なんじゃよ。ただの調査用の発信器だと思うから、思考停止するのだ。メリットがあれば、サルだってバカじゃない。大事に扱いもするさ

助手 それはそうでしょうけど…。そんな、膨大の情報が取れる機械を、敢えて持つメリットって何なんです?

博士 たとえば、コミュニケーションじゃな

助手 コミュニケーション?

博士 そう。この機械を持つことで、サルAとサルBが遠く離れていても、意思疎通することが出来る。これはサルにとって大きなメリットじゃろう

助手 た、確かに

博士 それに、この機械には最新の高性能CPUが組み込まれているから、ゲーム、調べ物、カメラ、いろんな用途に使えるのじゃ

助手 な、なるほど。確かにそれは便利ですね

博士 で、もともと発信器が組み込まれているから、その機械が持った情報は原理的に全てこちらで頂く事が出来るのだ

助手 わ、わぁぁぁ。サルも気の毒ですね

博士 気の毒?どこが?

助手 だって、そのつもりないのに、いろんな情報を明け渡しているわけでしょ?

博士 こちらとしては大助かりだ。サルの群どころじゃない、この星のサル全体の傾向を読み解くことも不可能じゃない

助手 ちょっと恐ろしくなってきました

博士 ビビることはない。まだ始まったばかりじゃぞ

助手 じゃ、ボスザルが浮気して隣のシマのメスザルに手を出したことも…

博士 まるっとお見通しというわけじゃ

助手 一家がこっそり夜逃げしたとしても…

博士 このマップ上で簡単に補足される

助手 す、凄い…この星のサルの動向は博士の手の中にある…

博士 ふふふ。君は恐れてばかりいるようだが、これはサルという種にとってとても有効なものなのだよ

助手 種にとって?たとえばどんな?

博士 この機械は、遠距離の通信はもちろんじゃが、近距離も通信が出来る。それを使えば、サルの体温を毎日記録して、地域毎にサルの体温マップを作ることも可能じゃ

助手 体温マップ?それが一体何の役に立つんです?

博士 鈍いな君は。たとえば、あるウイルスが流行ったとする。そのウイルスは高熱を伴う。となれば、この体温マップを見れば、いちいち調べに行かずとも、どのエリアでそのウイルスが蔓延しているか、一目瞭然というわけだ

助手 わあああ。それは確かに便利かも

博士 じゃろ?物事、デメリットばかり見ていても仕方ない。積極的にメリットを見いだすことじゃよ

助手 わ、わかりました…これでサルの生態調査はバッチリというわけですね…

博士 ふふふ。実はそれだけじゃない

助手 え?まだ何かあるんですか?

博士 この機械はデータを収集するだけではない。積極的に情報を流してサルの行動を意図的にコントロールすることが可能なのだ…

助手 ええええ????そんなことが????

 

(つづく)

 

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